日本疲労学会では
疲労とは過度の肉体的および精神的活動、または疾病によって生じた独特の不快感と休養の願望を伴う身体の活動能力の減退状態である
と定義しています。つまり、疲労とは心や体に過度な負荷(ストレス)がかかったことにより、日常的な活動能力が下がってしまう状態です。
「ただの疲れ」と軽視しがちですが、実は痛みや発熱と同様、体の異常を教えてくれる大切なサインの一つです。疲労という体が発しているアラームを見逃してしまうと、健康を著しく害してしまう可能性も。そんな疲労は主に『肉体疲労』と『精神疲労』に分けられます。
【肉体疲労】
主にスポーツや労働などで体を動かしたことによる身体的な疲れ。
【精神疲労】
頭を使う作業や、人間関係の維持などの精神的な活動による脳の過活動、過度なストレスが主な原因となる精神的な疲れ。ほとんど動かずに作業しているつもりでも、長時間同じ姿勢でいると筋肉が緊張状態となり、血行が悪くなって疲れやすくなります。さらに、目や脳は絶えず動いて活動しているため、肉体疲労と精神疲労を同時に感じることもあります。
また、疲労の種類には他に、倦怠感や全身の重だるさといった『全身疲労』、体の一部分(目や脚、腕など)の使いすぎなどにより生じる『局所疲労』があります。私たちが感じている疲労は、こうしたさまざまな疲労が複合的に絡み合っていることが多いのです。
疲労が蓄積すると…
では、疲労が解消されないとどうなるのでしょうか。疲れが溜まると、心身に次のような症状が表れることがあります。
【行動・心の症状】
- 思考能力の低下
- 刺激に対する反応の低下(鈍感になる、味覚が弱くなるなど)
- 注意力・集中力の低下、注意力が散漫になる
- 動作が緩慢になる
- 行動量の低下 など
【体の症状】
- 目のかすみ、痛み、ショボショボする
- 頭痛
- 筋肉痛
- 首のこり
- 肩こり
- 腰痛 など
「スポーツで激しく体を動かして疲れた」「仕事をがんばりすぎて、体も気持ちもグッタリ…」このような日常的に繰り返される疲れは『急性疲労』と呼ばれ、休息や睡眠によって解消されることがほとんどです。しかし、急性疲労をしっかり対処せず、蓄積させると『慢性疲労』に進行し、不快な疲れが長期間にわたって続く状態に。慢性疲労に陥ると、休息や睡眠では解消されず、日常のパフォーマンスはどんどん低下していきます。さらに、内臓機能も低下して病気にかかりやすくなるうえ、放置してしまうと、過労死に至ることもあるのです。
疲労回復しない原因
実は、あなたが感じている『疲労感』と根本の『脳を含む体の疲れ』は別物です。疲れたな…と思う感覚としての『疲労感』は、脳を活性化、覚醒させるはたらきがあるカフェインなどの成分の摂取や局所的なマッサージなどで対処できますが、根本の原因である『脳を含む体の疲れ』はきちんと休息することが重要です。つまり、雑草を切っても、根っこが残っている状態と同じなのです。